扁平足¶
「最近、土踏まずが落ちてきた気がする」「内くるぶしの内側が痛い」「長く歩くと足が疲れる」 — そんなお悩みはありませんか。 扁平足は決して珍しい病気ではなく、中年以降の女性に多くみられます。 このページでは、扁平足の2つのタイプと、それぞれの治療の選び方を、わかりやすくご説明します。

1. どんな病気?¶
足の内側にある「土踏まず」のアーチが落ちて、足の裏全体が地面についてしまう状態です。
主な原因¶
- 加齢とともに、後脛骨筋腱(こうけいこつきんけん) という腱の働きが弱くなることが、最大の原因です
- 女性、肥満、糖尿病、関節リウマチ、ステロイドの長期使用 がリスク
- 中高年以降、片足から徐々に進むことが多いです
こんな症状ありませんか?¶
- 内くるぶしの 後ろが痛い、腫れる
- 長く歩くと 内側が痛い
- だんだん 足が外を向いて見える ようになった
- 靴の 内側がすり減る
- 進行すると 外側も痛く なってくる
2. 扁平足には2つのタイプがあります¶
2-1. やわらかい扁平足(Flexible:フレキシブル)¶
- 立つとアーチが落ちますが、手で押すとアーチが戻ります
- つま先立ちはできる(あるいは、がんばればできる)
- 早期〜中期 の状態
2-2. 硬い扁平足(Rigid:リジット)¶
- アーチが完全に潰れていて、手で押しても戻りません
- つま先立ちが難しい・できない
- 関節が固まっている(進行期)
- 周りの関節も傷んできます
→ どちらのタイプかによって治療法が大きく変わるので、診察で 足を動かしたり、つま先立ちをしてもらったり して確認します。
3. 検査でわかること¶
| 検査 | わかること |
|---|---|
| 問診・診察 | 痛みの場所、進行具合、つま先立ちチェック |
| 荷重位レントゲン(立って撮る) | アーチの落ち具合、関節の傷み |
| MRI | 後脛骨筋腱 の状態、靱帯の状態 |
| CT(荷重位 CT) | 3次元で立体的に評価(進行例の手術計画) |
4. 治療¶
4-1. まずは保存治療¶
インソール・装具¶
- アーチサポートインソール が基本です
- 進行例では 足首装具(AFO) を併用
- 後足部を補正するインソール
リハビリ¶
- 後脛骨筋(つま先を内側に動かす筋肉)の強化
- アキレス腱のストレッチ
- 足の指の運動(足の中の小さい筋肉を鍛える)
薬¶
- 痛み止め(飲み薬・湿布)
- ※ ステロイド注射は 腱を傷める恐れがあるので避けます
4-2. 手術を考えるとき¶
- 半年〜1年の保存治療でも痛み・変形が進んでしまう
- お仕事や日常生活に支障が大きい
- 硬い扁平足になってきた
5. 手術:タイプで方法が変わります¶
5-1. やわらかい扁平足(Flexible)→ 靱帯を再建する手術¶
主に組み合わせで行います。
flowchart LR
A[Spring ligament 再建<br/>傷んだ靱帯を直す] --> D[アーチを取り戻す]
B[FDL 腱移行<br/>別の腱で代わりを作る] --> D
C[踵骨骨切り MDCO<br/>かかとの骨を内側にずらす] --> D
- 傷んだ靱帯(Spring ligament)を縫って直し・補強
- 別の腱(FDL: 長趾屈筋腱)を移植 して、弱った後脛骨筋腱の働きを補います
- かかとの骨を切って内側にずらします(MDCO)— 後足部の外反を直します
- 必要に応じて 外側の骨切り(足の前を外向きから戻す)や アキレス腱の延長 を併用
→ 自分の関節は残せます。動きも保てます。
5-2. 硬い扁平足(Rigid)→ 骨切り or 関節固定¶
- 三関節固定:傷んだ3つの関節(距骨下・距舟・踵立方)をくっつけて固定します
- 後足部の骨切り:早期 Rigid で、関節を温存できそうな場合に選びます
- 末期で足首も傷んでいれば、足関節の手術(人工足関節 or 足首固定)と組み合わせて行います
→ 確実に痛みは取れますが、その関節は動かなくなります。
6. 手術後の生活(Flexible・Rigid 共通)¶
後療法のポイント
- 最初の6週間は足を地面につけません(松葉杖で生活)
- 抜糸: 10〜14日
- 3か月はサポーターを着けます
- シャワー: 抜糸前は濡らさなければ可、抜糸後は許可
6-1. スケジュール¶
gantt
title 術後の目安スケジュール
dateFormat X
axisFormat %s
section 荷重
非荷重(松葉杖) :a1, 0, 6
部分荷重→全荷重 :a2, 6, 12
フリー :a3, 12, 26
section 外固定
シーネ :b1, 0, 2
ブーツ装具 :b2, 2, 6
サポーター :b3, 6, 13
section 活動
デスクワーク復帰 :c1, 6, 26
立ち仕事復帰 :c2, 13, 26
スポーツ復帰 :c3, 26, 50
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 0〜2週 | シーネ、完全非荷重、足を高く上げる |
| 2〜6週 | ブーツ装具、非荷重継続、抜糸 |
| 6週〜 | 部分荷重から全荷重へ、サポーターに変わります |
| 3か月 | 全荷重、サポーター継続、デスクワーク復帰可、立ち仕事も検討 |
| 6か月〜 | スポーツ復帰(種目により段階的)、サポーターは長距離・スポーツ時 |
6-2. 6週間非荷重の準備(重要)¶

非荷重の期間が長いので、手術前に生活環境の準備 が大切です。
- 自宅内の手すり・段差の確認
- ベッド・トイレ・お風呂への動線
- ご家族の支援、介護サービスの相談
- お仕事の調整(在宅勤務、休職)
- 食事・買い物の手配
「6週間も足をつけないなんて大変…」と不安に感じるのは当然です。ぜひ事前に主治医・ソーシャルワーカーにご相談ください。
6-3. お風呂・シャワー¶
| 時期 | シャワー | お風呂 |
|---|---|---|
| 抜糸まで(〜14日) | 濡らさなければOK(防水カバー) | × |
| 抜糸後 | 許可 | 許可 |
7. こんなときは病院にご連絡ください¶
すぐ病院へ
以下の症状は、感染や血流障害のサインのことがあります。遠慮なくご連絡ください。
- 急な強い痛み、薬が効かない
- 足の指が 冷たい・しびれる・色が悪い
- 装具・サポーターの中が きつくて痛い
- 傷から 膿・悪臭・赤みが広がる
- 38℃以上の発熱 が続く
- ふくらはぎが 腫れて痛い(血栓のサイン)
- 急な 息切れ・胸の痛み
8. よくいただくご質問¶
扁平足は、誰でも手術が必要ですか?
いいえ。多くの方は 保存治療 で症状が落ち着きます。手術は、痛みが強く、変形が進み、日常生活に大きく支障があるときの選択肢です。
6週間も足をつけないってつらくないですか?
確かに大変ですが、ここをしっかり守ることが、手術の成功につながります。事前に生活環境を整え、ご家族の協力を得て準備しましょう。在宅勤務やデスクワークなら、松葉杖で出勤可能な方もいらっしゃいます。
やわらかい扁平足から、硬い扁平足になるのを止められますか?
早期の装具治療と運動療法で 進行を遅らせる ことはできますが、必ず止められるとは限りません。痛みや変形が進んでいる場合は、早めに手術を検討するほうが結果が良いことが多いです。
両足とも手術したいのですが?
通常は片足ずつです。6週間非荷重が必要なので、両足同時だと生活ができなくなってしまうためです。
後脛骨筋のトレーニングって、自分でもできますか?
はい。ゴムバンドを使って足を内側に動かすトレーニング、片足のかかと上げ などを、医師・理学療法士の指導のもと行います。「無理しすぎず、続ける」ことが大切です。
保険・費用は?
日本では保険診療です。高額療養費制度 の対象です。詳しくは医療相談室へ。